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建築分野とのコラボレーション・ハッカソン「モノの移り変わり」in FILTER gallery

workshop

23年度にオープンラボでは情報学と様々な分野を横断した取り組みが行われてきました。以前、ブログでも紹介したように人文学部国際コミュニーケーション学科との学部横断プロジェクトやデザイン学部との協働ワークショップなどです。

 

今回は建築分野と情報学をかけ合わせたワークショップの紹介です。参加者は建築学科の学部生から大学院生とデザイン学科と情報学科の学部生から大学院生、さらに外部の参加者を合わせて12名(建築:3名、デザイン:2名、情報:7名)に参加頂きました。
今回のワークショップは「アップサイクル」を背景とし、廃材を利用した「モノの移り変わり」をテーマに行われ、一級建築士として建設会社で勤務する吉田氏をゲストスピーカーとして迎えて実施されました。ワークショップ開催時、吉田氏は個人の活動としてDesign Lab.ShuHaRe:(以下、ShuHaRe)という「アップサイクル」をテーマにFILTER galleryの運営経験をお持ちです。アップサイクルとは、廃棄されるものに価値を見いだし付加価値を付けて新しいものに生まれ変わらせる意味を持ち、建築業界などで社会の持続可能性を考えるためのキーワードです。ShuHaReが運営するギャラリーは雑居ビルから出る廃材を極力再利用した改築を行なっており、その都度の展示内容に合わせた空間設計を行なっています。

実施したワークショップは、本学情報学研究科情報学専攻の兼松美羽さん、清水海人さんに加えて学外授業協力者である遠藤勝也さん、本学情報学部の実習指導員である武富拓也さんによって企画、および運営を実施されました。またFILTER galleryを共同で運営している山下氏や石井氏にもご協力頂き2日間のワークショップが行われました。
ワークショップ1日目に吉田氏から建築業界におけるアップサイクルについて、ご自身の活動であるFILTER galleryの運営の経験から講義を行い、講義をもとにアイデア出しから、廃材を作り替えたプロトタイプ制作を行いました。2日目はFILTER galleryの共同運営をしている山下氏や石井氏にもご協力頂き、亀戸にあるFILTER galleryでの作品配置、および展示を実施しています。

 

ワークショップ1日目:「物の移り変わり講義」および作品制作

 

1 Design Lab. ShuHaRe:によるレクチャー
Design Lab. ShuHaRe:の吉田氏、石井氏、山下氏からFILTER galleryの活動および、 運営経験からアップサイクルについての説明を頂いた。廃材を加工するにあたり、 レシピとして「進める」「残す」「加える」の3つのキーワードで整理された図を解説頂きハッカソンのテーマである「モノの移り変わり」のコンセプトの紹介頂きました。

2 明星大学の運営により作品例の紹介
情報学専攻の大学院生である兼松さん、清水さんから作品例の紹介が行われた。兼松さんから非接触給電を、清水さんからはソレノイドの技術を用いた作品が紹介していました。 「モノの移り変わり」のテーマに沿って技術それ自体ではなく廃材の歴史を想起させるように技術を利用し、コンセプトと技術の関係の理解を促す説明を行いました。

3 チームビルディング
4チームにチーム分けをした後にそれぞれのアイデアの著作権を放棄する同意書にサインをすることによって、アイデアをみんなで活性化することを目的とした取り組みも行われていました。ランチを兼ねてそれぞれの自己紹介や自分の持ってる技術の共有を行いました。

4 アイデア出し
情報、建築、デザインを専攻する参加者がそれぞれの観点からモノ(廃材)の移り変わりをテーマにアイデア出しを行った。ポストイットでアイデアの数を出すチーム、素材を組み合わせながらアイデアを出しが行われていました。またアイデア出しにはそれぞれの専門からのアプローチが活用されていました。

5 制作
情報学専攻の参加者は廃材と情報技術を結びつけるために、「Physical Computing」の手法を用いた作品制作を行っているチームが多かったように思えました。デザインを専攻している参加者はユーザー目線と素材の組み合わせに、建築学の観点からはギャラリーの空間を作品がどのように影響を与えるか、といった各専門を横断したやり取りを行い制作が行われていました。

6 展示会場での配置について
Design Lab. ShuHaRe:からギャラリーにどのように作品を配置するかの打ち合わせが行われました。ギャラリー内の光の入り方、人の動きといった空間的な特徴と作品の特徴に基づいき、それぞれの作品の配置決めが行われました。

 

ワークショップ2日目:FILTER galleryでの展示

ワークショップ2日目は亀戸にあるFILTER galleryで制作物の配置し、ワークショップ参加者以外の方も鑑賞ができるように展示が行われました。下記では実際に展示された作品を紹介したいと思います。

作品:「椅子とストレス」
制作者:望月しょうた(デザイン)・菊池こうた(情報)・篠原もえ(情報)
概要:望月さんがオフィス家具のデザインをしていることもあり、椅子がテーマとなった作品。ただの椅子を制作するのではなく、そこに「生命」を感じさせるように情報技術を付加した作品となっている。光が植物に当たらないとカンカンという音と椅子が振動し、「光をくれ」と言わんばかりのイライラしたかのような印象を受ける。光を与えると振動が止まる。光の検出は照度センサーで、ソレノイドで椅子を叩くことで音を発している。

作品:「廃材でhighになる」
制作者:福田けんた(建築)・平松まもる(情報)・加藤いさき(情報)
概要:上部の長さが不揃いのパイプを束ねた形と下部の垂れ下がる配線が印象的な作品。「highになる」「廃材」「ハイライト」など様々な「ハイ」が散りばめられた作品。元々はパイプを束ねた物が海外のお土産を連想し、日常ではあまりみないものにワクワクしハイになるというところからアイデア出しは行われた。下部の配線は、普段一目に付かない床下の配線をイメージしており、距離センサーを加えること、人が近づくと「ハイ」になり、カチカチという音が早くなり、高ぶっている気持ちを表現するインタラクティブな機能を持っている。

作品:「Hang out」
制作者:内田けんと(デザイン)・田中えいじ(建築)・熊田はるか(情報)
概要:「ハンガーをかける」と音楽を楽しみために「レコードをかける」という言葉遊びから作品のアイデア出しを進めていた。下段のポールにかかっているハンガーを上段にかけると、ハンガーのレコードを模した部分が周り中に入っている廃材の音がするようになっている。アイデアスケッチには空間を含めてどのように作品が体験されるかという視野で制作されていた。

作品:「ギャラリー空間の記憶を表示する時計型インターフェース」
制作者:佐藤あやね(建築)・岸野まなみ(情報)・木村りく(情報)
概要:円形の木製の廃材を時計に見立て、時計の針を回すと過去のギャラリーの空間の映像が流れるという作品を制作。時計回りに針を回すとギャラリー解体の様子、スケートパークイベント、マーケットイベントの映像を見ることができる。

 

ここからは運営者の作品です。参加者のサポートだけではおさまらず作品制作と展示を行なっています。運営者であり大学院生の清水さんと兼松さんは、本ワークショップを企画するにあたり何度もFILTER galleryに足を運んでおり、ギャラリーの廃材の変化の履歴を可視化するというアップサイクルの特徴を取り込んだ可視化・可聴化された作品を制作してます。
作品:「廃材の記憶を聞く」
制作者:兼松みう(情報)
概要: FILTER galleryは展示ごとにつど作品に合わせた空間設計をおこなっており、使われている什器の過去の別の什器として使われた履歴がある。その什器に制作したデバイスを設置し、耳を澄ませるとかつて別の空間で別の形をしていた頃の音が聞こえてくる。物の履歴を音の記憶で聴くことができる作品。

 

作品:「廃材の移り変わりを空間と音で把握する」
制作者:清水かいと(情報)
概要: FILTER galleryは展示ごとにつど作品に合わせた空間設計をおこなっていることから、空間の平面図その都度移り変わる。その変遷をレーザーカッターで木材に彫刻している。ワイヤーはアップサイクルにより、形が移り変わった廃材の変遷を表している。ワイヤーに触ると、移り変わった廃材の現在の位置(扉、机など)から音がなり空間的に配置を理解することができる。

 

ここからは運営者があふれる制作意欲のままに制作したユニークな作品を紹介したいと思います。

 

作品:柄が突っかかってくる
制作者:清水(情報)、兼松(情報)
概要: 本来柄は床の下にあり生活者に認識されることは少ない。その柄を利用した作品。柄(つか)を踏むと「使えねーなー」、「あつかましいな」と突っかかってくるという作品。

 

作品:布を使った動く彫刻
制作者:遠藤(情報)、菊池(情報)
概要: 縦糸と横糸の色に違いがあるため見る角度によって、布のグラデーションや艶感に違いがでる。その布をキネティックアート的に動く彫刻として落とし込んだ作品。鑑賞者からは「涼しげだね」と言う感想をもらったりしたので、風鈴的な要素も感じる作品となっている。

 

最後に

今回のワークショップで、FILTER galleryから出た廃材が「移り変わり」のテーマの元でユニークな作品として生まれ変わりました。 2日間と短い期間ではありましたが、建築・デザイン・情報技術を組み合わせて作品を作る過程で様々な制作アプローチが取られていることが大変興味い時間となりました。 情報学と建築、デザイン分野を横断し、また大学外で展示まで行える機会は「Design Lab.ShuHaRe:」の皆さんのご協力なしにはとても実施することができなかったと思います。心より感謝申し上げます。

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